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「模倣犯」 宮部みゆき

 文庫ではなく、ハードカバーの上下巻2冊を買いました。文庫だと、5冊になるんですね。かなりの長編作品でしたが、結構すぐに読み終わりました。表紙のイラストは、若者が振り向いているものと三角座りのもの。サスペンス物の犯罪小説くらいかなと思って読み始めましたが、見事に裏切られました。

 3部構成で、第1部では、被害者・警察・関係者(特に被害者家族)からの視点。

       第2部では、犯人からの視点。  

       第3部では、また、被害者・警察・関係者(特に記者)からの視点。

 で物語は語られます。

 その、中心となる犯罪が連続女性誘拐殺人。その、犯罪の描写がリアルすぎる。本当に、そんな犯罪が実在するのではと思ってしまうほどです。

 3部構成なので、同じ事件を3回読むことになるのですが、視点を変えるだけで、飽きることなく最後まで読み終えました。

 

 第1部では、被害者家族の悲痛な思い、最後まで望みを捨てられない苦しさ。まるで、当事者になったかのような気持ちにさせる登場人物の心の葛藤をリアルかつ見事に描写していると思います。警察・マスコミに振り回され、何を信じて行動すればいいのか、また、自分の行動が果たして正しいのか。読んでいる自分が辛くなります。

 

 第2部では一転、犯罪者からの視点です。犯罪者は2名ですが、この二人の人物設定や物語で果たす役割などが見事に描かれています。また、非人間的で残虐な犯行が、犯人たちにとっては娯楽のように行われている様が、余計にその犯罪の残虐性を際立たせています。ただ、犯人の一人の心の弱さが、犯罪を終わりに導くわけですが(その結果、もう一人は、まんまと逃げおおせるわけですが)、この段階では、まだ、解決する以前の段階で、3部へと続きます。

 

 第3部では、犯人に間違えられた男の妹と残った犯人の一人、それと女性ルポライターを中心に話が進みます。1部と2部では、同じ時間軸で、被害者側・犯人側からの視点でストーリーは進みましたが、3部は、その後の話です。もちろん、最終的には物語は解決するのは分かっているのですが(小説ですしね)、その解決の仕方に、どんどん引き込まれていきます。

 

 この小説は、第2部の段階で犯人が誰か、どのような人物かが分かりますので、単純な犯人捜しのサスペンス小説ではなく、犯罪が起こった時の、被害者・警察・マスコミ・犯人の様々な視点を通しての事件の見え方や人生に落とす影などをリアルに描写し、読者を惹きつけます。

 犯罪が一度起こってしまうと、犯人が捕まっても、その事件に関わった人間の生活はもう元には決して戻らないということを、実感しました。

 「模倣犯」というタイトルの意味は、最後の最後に分かります。犯人逮捕のキーワードですね。

 ただ、この小説が刊行されたのは、2001年なので、現在の世相とは相いれない部分が多々ありますが、そこは、20年近く前の時代の話と割り切って読まないといけない部分があります。

 長編なのと犯人が早々に分かるので、犯人捜しをしたい読者には、向いていないかもしれません。

 あと、映画やドラマとして映像化されているみたいですが、そちらの評価はよく知りません。

模倣犯〈上〉

模倣犯〈上〉

 

模倣犯〈下〉

模倣犯〈下〉