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「カラフル」 森 絵都

 生前の罪により、輪廻のサイクルから外されたぼくの魂。だが天使業界の抽選にあたり、再挑戦のチャンスを得た。自殺を図った少年、真の体にホームステイし、自分の罪を思い出さなければならないのだ。真として過ごすうち、ぼくは人の欠点や美点が見えてくるようになるのだが……。(文庫裏表紙より)

 

  文庫裏表紙には、「老若男女に読み継がれる不朽の名作」とも書かれていますが、産経児童文芸賞 受賞作品ということで、子供(と言っても中高生くらい)でも非常に読みやすい文章になっています。

 この作品は、冒頭に強引な設定を強いてきます。少しだけ書き出すと、

 死んだはずの僕の魂が、ゆるゆるとどこか暗いところへ流されていると、いきなり見ず知らずの天使が行方をさえぎって、「おめでとうございます。抽選に当たりました!」と、まさに天使の笑顔を作った。

 

 この抽選が、輪廻のサイクルから外れた罪深い魂にやり直しの機会を与えるものです。まあ、この設定がないと物語は始まらないのですが、いきなりの前触れなしの無茶設定。しかも天使の名前が「プラプラ」。この冒頭の部分をスムーズに受け入れられるかどうかで、この後の物語を受け入れられるかどうかが決まると思います。

 こんなバカな!と思ってしまえば、物語の土台が崩れてしまいます。私は、よくこんな設定を思い浮かぶものだと感心しながら読み始めました。特に抵抗はなかったということです。また、この「ぼく」と天使「プラプラ」の話の掛け合いが、漫才のようなテンポの良さで思わず顔がほころびます。罪深い魂とは、とても思えません。

 しかし、この物語は、自殺を図った真を中心とした物語です。もちろん、中身は「ぼく」ですが。重い題材なのです。真は世界の「負」の部分しか見ておらず、真にとって、世界は一色であったのだと「ぼく」は思い知らされます。ただ、真として家族・クラスメートと接するうちに、世界は一色ではなく多彩(たさい)だと「ぼく」は気付き、話は結末へと導かれていきます。

 重い題材でありながら、天使「プラプラ」が要所で登場することにより、重苦し過ぎることなく、それでも、伝えるべきことは伝えている。そんな感じでした。人によっては、「プラプラ」が出ることにより、「ふざけている」と感じる方もいるかもしれません。ただ、この物語を、現実の中高生に読んでもらいたいと思って書いたのなら、「プラプラ」は必要な登場人物だと思います。

 後半に入ると結末が想像できるようになってきますが、その通りの結末に落ち着くことで、なんとなくホッとさせられました。

 是非、中高生に読んでほしいと思います。文章のボリュームもあまりなく、半日あれば読み終えるくらいです。ただ、援助交際の話も出てきますので、小学生には、まだ早いかなとは思います。

 

カラフル (文春文庫)

カラフル (文春文庫)