毎日が読書日和ー思ったままの感想文

40歳で気付いた読書の魅力。小説から映画まで、感想を綴ります。

「テロリストのパラソル」 藤原伊織

「テロリストのパラソル」の内容

ある土曜日の朝、アル中のバーテンダー・島村は、新宿の公園で1日の最初のウイスキーを口にしていた。そのとき、公園に爆音が響き渡り、爆弾テロ事件が発生。全共闘運動に身を投じ、脛に傷を持つ島村は現場から逃げ出すが、指紋の付いたウイスキー瓶を残してしまう。後日、テロの犠牲者の中には“同志"だった学生時代の恋人と、ともに指名手配された男が含まれていたことが判明した。島村は容疑者として追われながら、事件の真相に迫ろうとする――。
江戸川乱歩賞直木賞をダブル受賞した、小説史上に燦然と輝く傑作。 【「BOOK]データベースより】 

 

 「テロリストのパラソル」の感想

  史上初の江戸川乱歩賞直木賞のW受賞作品です。ミステリー作品として期待して読み始めましたが、ミステリーではなくハードボイルド作品でした。精神的・肉体的に強靭で、感傷や恐怖などの感情に流されない行動的な人物の眼で物語を語ることをハードボイルドと定義すればの話ですが。

 

 もちろん、ミステリーとしての要素もあります。ただ、ミステリーとして読み始めるとかなり違和感を感じます。あくまで、登場人物の生き様が大事であり、事件はあくまでハードボイルド小説のためのツールに過ぎません。だから、事件の構成要素と筋書きは甘く感じます。

 

 事件自体は数十人の死者を出す大掛かりな爆弾テロです。それにも関わらず、登場人物は非常に限られた狭い世界の数人の人間だけであり、また、舞台となる行動範囲も狭い。事件の大きさの割には、せせこましい印象を受けてしまいます。島村が求めているのは、事件の犯人なのか事件の目的を知ることなのかも、はっきりしない印象です。偶然に偶然を重ねて、島村を無理やり事件に関わらせています。

 また、アル中のバーテンダーにしては、鋭い推察と行動力で警察より先んじて事件の真相を掴んでいくのは無理があるのでは?。シャーロックホームズ顔負けの推理と行動力です。

  主要登場人物は全共闘闘争の生き残りでアル中の島村とヤクザの浅井。そういうアウトローな人物を活躍させることで、人物の価値は世間ではなく自分の行動で決めるものだと描いているのでしょう。とは言っても、アル中とヤクザなんですが。

 登場する人物のほとんどが自分の生きる道を自覚し、そのためならばどんな犠牲も払うというくらいの気概を持っています。まさしくハードボイルド満載の小説です。

 

 ミステリーとして読めば都合の良すぎる話ですが、ハードボイルド小説として読めば、登場人物のセリフ・行動は読みごたえがあります。生きるということは、こういうことなんだなと思わせてくれます。

 ミステリーなので、あらすじは文庫裏表紙以上のことは書きません。

 ハードボイルド好きは必読。ミステリーを目的とするならば「・・・」です。

 いろいろ書きましたが、読みごたえはありますし、登場人物は魅力的な人物ばかりです。ただ、ミステリーとしては、私はご都合主義だなと感じました。

 藤原伊織さんはすでに死去されているということです。

 

 

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