「本を読む人だけが手にするもの」 藤原和博

 読んでみて最初の感想は、読めば読むほど納得させられる思いでした。

 この本はおそらく本を読まない人、もしくは、ほとんど読まない人に対して書かれているのだと思います。そもそも、そういう人がこの本を手にするかどうかも疑問ですが。

 それはさておき、この本はとても分かりやすい。なぜ本を読むべきなのかを、系統立てて自身の経験を基に説明しています。

 「本を読むことの必要性」「読むことによって得るものの重要性」を説いています。読むことによって得るものが重要ということは、読まないことによりそれだけ重要なものを失っているということです。

  以下、各章の内容を簡単に説明します。あくまで、簡単な内容説明なので、十分に筆者の意図を伝えるものではありません。ご了承ください。

 

序章 成熟社会では本を読まない人は生き残れない

  日本社会は「成長社会」から「成熟社会」へと移行しており、この状況をまずは理解する必要がある。「成熟社会」においては、「本を読む人」「本を読まない人」に区分される社会となると筆者は言う。「成長社会」では、社会においての幸福の価値観は共有されており、その価値観に基づき考えることなく従えば幸福になれた。しかし、「成熟社会」においては、幸福は個人がそれぞれ見つけていかなければならない。そこには、共通の価値観に基づく幸福は存在しない。そして、その価値観と幸福を獲得するためには、読書が重要になってくる。

 第1章 本を読むと、何が得か?

  筆者は、本を読む習慣を持つだけで、既に10人に1人の人材であると書いています。

 そこには、時間をどのように使うかということ具体的な例を使い説明しています。

  「パチンコをする人」

  「スマホゲームをする人」

  「読書をしない人」

  「読書をする人」の4分類です。

「パチンコをしない」ことにより、1/2の人材

スマホゲームをしない」ことにより、更に1/2の人材

「パチンコ・スマホをしない時間」を読書することにより、更に1/2の人材

 1/2×1/2×1/2=1/8の人材です。筆者は、これで大まかに10人に1人の人材だと言っています。残りの9人は時間を適切にマネージメントできず、無駄な時間を浪費していると断じています。

その他、「読書量と収入の密接な関係」「読書によって身につく人生で大切な2つの力」についても言及しています。

 第2章 読書とは「他人の脳のかけら」を自分の脳につなげること

  「1冊の本にはどれほどの価値があるのか」ということについてです。1冊の本は作家の知識すなわち脳をフルに使って書かれた作家自身の脳のかけらである。その脳のかけらと自分の脳を繋げることで脳が拡張されるということです。

 また、「2つのみかたを増やすこと」についても、書いています。二つのみかたとは「見方」「味方」です。多くの作家の著作を読むことで、多くの脳のかけらと繋がることができ、世界をより多くの視点で観察することができる。 

 「味方」は、多くの見方(視点)で世界を見ることにより、より多くの人と価値観を共有、すなわち味方を増やすことができる。

 第3章 読書は私の人生にこんなふうに役立った

  タイトルのとおり、筆者の体験を基に読書が人生にどのように役立ったかを書いています。

 子供の頃に読まされた名作により、読書嫌いになった話や大学の先輩とに出会いにより読書に対する考え方に変化が訪れたこと。

 体調を崩したことにより本を読む時間が取れたこと。本を読むことによって、人生の鳥瞰図を獲得したことなど、筆者の経験がリアルに綴られています。

第4章 正解のない時代を切り拓く読書

  「成熟社会」において必要なのは「情報編集力」である。「情報編集力」とは、最適解を見つけ出す力であり、これを獲得するには5つのリテラシーと1つのスキルを高める必要がある。それを磨くためには読書が重要であると説いている。

5つのリテラシーとは

 「コミュニケーションする力」
 「ロジックする力」
 「シミュレーションする力」
 「ロールプレイングする力」
 「プレゼンテーションする力」

1つのスキルとは

 「複眼思考(クリティカル・シンキング)」

第5章 本嫌いでも読書習慣が身につく方法

  民間出の中学校の校長として働いた時に、読書嫌いの多い子供にいかにして読書をさせるかという実体験などを絡めながら、どうやったら読書習慣がつくのかということ。本の選び方についても、筆者曰く、「乱読」が大切である。ベストセラーだからと言って、変に読まなかったりする必要はない。ベストセラーには、それなりに理由があるから。自分で読書の幅を狭めると良書に出会う機会が失われる。数多く読まなければ。良書には出会えないということ。

  

 あまりに簡単に書きましたので、もしかしたら誤解を生んでしまう表現をしている可能性もありますので、是非とも本書を読んでみてください。すでに読書の習慣のある人にも十分読む価値はあると思います。

 この本には、読書がこれからの社会を生きていく上でどれだけ大切かということと共に、読書によって得たものを、外に発信することの大切さも書かれています。その手段はどんなものでも構わないと。感想文であったり、ブログであったり。

 この本は、読書を勧めるというよりも、読書をしないことが「成熟社会」においてどれほど不利なことであるのかを警鐘している気がします。

 本をあまり読まない人でも、2日あれば十分読めると思います。週末の土日に、一度手に取り、じっくりと読んでみてはいかかですか。必ず、プラスになるものを得ることができると思います。

  

藤原 和博 (ふじはら かずひろ)のプロフィール
 教育改革実践家
 杉並区立和田中学校・元校長
1955年東京生まれ。1978年東京大学経済学部卒業後、株式会社リクルート入社。東京営業統括部長、新規事業担当部長などを歴任後、1993年よりヨーロッパ駐在、1996年同社フェローとなる。2003年より5年間、都内では義務教育初の民間校長として杉並区立和田中学校校長を務める。08年~11年、橋下大阪府知事ならびに府教委の教育政策特別顧問。著書は『人生の教科書[よのなかのルール]』『人生の教科書[人間関係]』(ちくま文庫)など人生の教科書シリーズ、『リクルートという奇跡』(文春文庫)、『校長先生になろう!』(日経BP)、ビジネスマンの問題解決に必須の情報編集力を解説した『つなげる力』(文芸春秋社)等。

              藤原 和博氏のホームページより引用