毎日が読書日和ー思ったままの感想文

40歳で気付いた読書の魅力。小説から映画まで、感想を綴ります。

「空中ブランコ」 奥田英朗

空中ブランコ」の内容

伊良部総合病院地下の神経科には、跳べなくなったサーカスの空中ブランコ乗り、尖端恐怖症のやくざなど、今日も悩める患者たちが訪れる。だが色白でデブの担当医・伊良部一郎には妙な性癖が…。この男、泣く子も黙るトンデモ精神科医か、はたまた病める者は癒やされる名医か!?直木賞受賞、絶好調の大人気シリーズ第2弾。 【「BOOK]データベースより】 

 

空中ブランコ」の感想  

 伊良部一郎シリーズ?の第2弾です。前作の「イン・ザ・プール」は、かなり笑わせていただきました。この「空中ブランコ」も、前作に負けず面白かった。

 伊良部一郎は、前作よりもかなり活動的になっていました。今回は、診察室から飛び出して、周りを振り回します。

 

  神経科を受診するのは、とても勇気のいることです。その勇気を振り絞って受診に訪れた患者たちを、伊良部は全く深刻に受け止めません。自分の興味のあることばかりを前面に押し出し、患者を惑わせます。患者が真剣であればあるほど、伊良部の奇行が際立ち、読んでいて面白味を増してくるのです。

 

 ただ、2作目ということもあり、物語の展開が定型化しつつあるかなと少し感じました。

 それが、診察前に打たれる注射です。前作でばれていますが、伊良部は注射フェチです。診察に訪れた患者にまず注射を打ちます。毎回、同じ展開です。前作から続いていると、だんだん飽きてきます。

 物語の展開も、だいたい同じです。伊良部の奇行に振り回されながら、病気の原因に気付く。そして、症状が改善もしくは改善に向かうといった感じです。

 

 話は面白いんです。予定調和を面白いと思うかつまらないと思うか次第です。私は、予定調和もありだと思っています。意外性はないですが、安心して読めますし、そのことだけをもって、つまらないとは思いません。予想を裏切ることだけが、小説の面白味でもないです。この小説は、笑いがあちこちに仕掛けてあります。その仕掛けを楽しむのも、この小説の醍醐味です。

 

 今回は、短編5話からですが、一般人の出番はないです。医者を一般人とするならば、一人だけ一般人です。

 5編のタイトルと主人公は、

  空中ブランコ」・・・サーカスの空中ブランコ乗り

  ハリネズミ」・・・ヤクザ

  「義父のヅラ」・・・神経科医師

  「ホットコーナー」・・・プロ野球選手

  「女流作家」・・・小説家

 

 「義父のヅラ」以外は、普通に生活していれば、まず、出会うことはないでしょう。

 「義父のヅラ」以外の4話は、神経症がその職業にとって致命的なものです。しかし、それらが解決するのも予定調和です。なので、新鮮味はあまりないかもしれません。

 私は、この中では「義父のヅラ」が一番好きです。学部長の義父のヅラを剥ぎ取りたい衝動を抑えられない。何となくその気持ちは分かります。やってはいけないことほど、やりたくなるものですし。この話が一番面白く読めました。

 どの話もそうですが、時間を忘れて面白く読める。それ以上でもそれ以下でもない作品です。

 

 この「空中ブランコ」は、第131回直木賞を受賞しています。前作の「イン・ザ・プール」があってこその「空中ブランコ」です。この2作目が直木賞を受賞したのは、違和感があります。受賞するなら、「イン・ザ・プール」で良かったのではと感じます。

 

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