毎日が読書日和ー思ったままの感想文

40歳で気付いた読書の魅力。小説から映画まで、感想を綴ります。

「小太郎の左腕」 和田 竜

「小太郎の左腕」の内容

 一五五六年。戦国の大名がいまだ未成熟の時代。勢力図を拡大し続ける戸沢家、児玉家の両雄は、もはや開戦を避けられない状態にあった。後に両陣営の命運を握ることになるその少年・小太郎のことなど、知る由もなかった―。 【「BOOK]データベースより】

 

「小太郎の左腕」の感想  

 1556年というと、織田信長今川義元桶狭間の合戦で破る4年前です。戦国時代初期の設定です。舞台は戦国時代ですが、物語自体はフィクションなので、歴史上の戦国武将が登場するわけではありません。しかし、まるで史実に基づいているかのような錯覚に陥るくらいのリアリティさを感じました。

 

   地方の領主である「戸沢家」と「児玉家」の局地戦。その攻防の中に、武士の矜持と苦悩を余すところなく描いています。

 この小説は「小太郎の左腕」というタイトルですが、主人公は「小太郎」ではありません。戸沢家の猛将「林半右衛門」です。彼の生き様の物語です。

 そして、彼の武士としての生き様に、大きな影響、どちらかと言えば影を落とすのが小太郎です。

 

 では、小太郎とはどういう人物なのか。少しネタバレになってしまいますが容赦ください。

 小太郎は、11歳の少年で鉄砲傭兵集団「雑賀衆の者です。「雑賀衆」と聞いて、ピンと来る人は歴史好きの人でしょう。伊賀の忍者のように、あまり一般には知られていません。 

 実は私は、和歌山に住んでいます。なので、雑賀衆のことは、良く知っていました。和歌山では「孫市まつり」というものも開催されたりしますので、結構親しまれています。和歌山と言えば、徳川吉宗雑賀孫市という感じです。 

 和歌山に住んでいる者としては、「雑賀衆」が出てくると自然と引き込まれます。しかも、この小説では、圧倒的な鉄砲の使い手として登場しているので興奮しました。

 ただ、小太郎はこの物語で重要な人物ではありますが、主役ではありません。しかし、その重要な役割は、「雑賀衆」の存在感を示していました。

 

 そこで、本筋の林半右衛門です。先ほども書きましたが、林半右衛門が仕える「戸沢家」と「児玉家」の局地戦が本筋です。林半右衛門は、勇猛果敢で正々堂々と戦い、卑怯な行いを何よりも嫌う猛将で、戸沢家においても、また、児玉家においても一目置かれている武士です。我々が、戦国武士というと想像する典型のような武士です。

 そして、「児玉家」にも、同じような武士が一人。花房喜兵衛です。この二人の戦いが中心軸です。

 当時の武士の考え方は、いかにして生き、いかにして死ぬか。そのことに尽きると言わんばかりの二人の猛将です。卑怯な振る舞いをするくらいなら、敵陣に乗り込み、見事に散ることが武士の本懐だと頑なに信じているのです。その二人だからこそ、敵同士でありながら、味方以上に信を置く存在でもあったのです。

 

 ただ、その生き方を貫くことにより、盟主である戸沢家を窮地に追い込み、配下の兵たちを苦しめ、死に至らしめると分かった時に、半右衛門は悩みます。そして、ある選択をします。その結果、どのような結末を迎えることになるのか。それが、この小説の言わんとするところです。まさしく、武士とはいかにあるべきか、どう生きるべきか。それを語る小説なのです。

 小太郎は、そのきっかけとして登場しているに過ぎないのかもしれません。

 もちろん、ただ単に、半右衛門と小太郎だけの話ではありません。

 戸沢家の跡取り「戸沢図書」との確執。半右衛門は「功名漁り」という渾名がありますが、それは図書との確執の元となった人物によるものです。

 また、玄太という少年も小太郎との関係において、重要な役割を演じます。著者は、登場する人物達を通して、戦国の世の様々な生き方を見せてくれます。

 

 前半は明朗闊達な林半右衛門を中心に生き生きとした物語になっていますが、後半は暗く沈みがちです。そして、最後は救いがあるのかないのか。読む人次第で、感じ方は変わるかもです。

 和田竜氏の時代小説は、読者を惹きつけ離さない魅力に溢れています。 

 

雑賀衆(さいかしゅう)は、中世の日本に存在した鉄砲傭兵・地侍集団の一つである。また、史料に見られる「惣国」と同じと考えられているため、「紀州惣国」もしくは「雑賀惣国」とも呼ばれている。雑賀衆紀伊国北西部(現在の和歌山市及び海南市の一部)の「雑賀荘」「十ヶ郷」「中郷(中川郷)」「南郷(三上郷)」「宮郷(社家郷)」の五つの地域(五組・五搦などという)の地侍達で構成されていた。高い軍事力を持った傭兵集団としても活躍し、鉄砲伝来以降は、数千挺もの鉄砲で武装した。また海運や貿易も営んでいた。「さいが」と読むのは誤読である。【「ウィキペディア」より】 

鈴木 孫一(すずき まごいち)は、雑賀衆雑賀党鈴木氏の棟梁や有力者が代々継承する名前。雑賀孫一という名でも知られる。表記ゆれとして「孫市」の名も知られる。【「ウィキペディア」より】 

 

 今年は終わっていますが、宣伝です。

 

 

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