毎日が読書日和ー思ったままの感想文

40歳で気付いた読書の魅力。小説から映画まで、感想を綴ります。

「塩の街」 有川 浩

塩の街」の内容

塩が世界を埋め尽くす塩害の時代。塩は着々と街を飲み込み、社会を崩壊させようとしていた。その崩壊寸前の東京で暮らす男と少女、秋庭と真奈。世界の片隅で生きる2人の前には、様々な人が現れ、消えていく。だが―「世界とか、救ってみたくない?」。ある日、そそのかすように囁く者が運命を連れてやってくる。『空の中』『海の底』と並ぶ3部作の第1作にして、有川浩のデビュー作!番外編も完全収録。 【「BOOK」データベースより】 

 

塩の街」の感想 

 有川浩氏のデビュー作で第10回電撃小説大賞“大賞”受賞作です。

 受賞作は文庫で刊行されましたが、その後、ハードカバーの単行本で再刊行されています。 受賞から文庫、単行本に至る変遷は、単行本のあとがきに著者が書き記しています。私は単行本を読みましたので、その感想です。

 

  著者の初期の作品の中でも、自衛隊3部作として数えられている内の1冊です。

 あとの2冊は「空の中」「海の底」です。

 タイトルから想像すれば、「空の中」は航空自衛隊、「海の底」は海上自衛隊、「塩の街」は陸上自衛隊をテーマにしているように感じます。しかし、「塩の街」を読んだ限りでは、陸上自衛隊の活躍を軸とした小説ではありません。

 

 そもそも、自衛隊の活躍の話ではなく、恋愛小説です。それも、中高生が好みそうな淡く切ない恋愛小説です。電撃大賞受賞のライトノベルですから、中高生向けとなるのは当然ですが。私の年齢で読むと、少し気恥ずかしくなってきます。

 実のところ、ハードカバーの単行本を買ったので、元が電撃大賞受賞のラノベだとは全く知りませんでした。陸上自衛隊を舞台にした、もっとシリアスで現実的な話とばかり思っていたので、ある意味肩透かしです。それも、27・8歳くらいの航空自衛隊のエースパイロットと女子高生の恋愛話だとは思いませんでした。

 

 設定自体は、非現実的ながら意外性と独創性があり、面白い。人間が塩になる(作中では「塩害」と表現しています)というのは、どういうところからアイデアを得たのか興味深いです。

 ただ、あくまでも恋愛小説として書かれているので、塩害の原因と解決があまりに中途半端すぎる気がします。塩害の原因を統計からの推測で捉え、しかも解決方法は「破壊してしまえ」という乱暴振りです。

 恋愛小説としては、王道中の王道といった感です。女子高生が淡い恋心を抱くのは、年上のエースパイロット。そして、そのパイロットも女子高生に恋心を抱いている。しかし、お互いの気持ちを確かめることができない。さまざまな出来事の中で、誤解があったりすれ違ったりしながら、お互いの気持ちを確かめあう。読者は、その二人の恋が成就するのを願って読み進めるといった小説です。

 

 中高生が読めば、登場人物に感情移入して、心に響くものがあるかもしれません。しかし、私は感情移入することもなく、塩害の話も中途半端だったので、消化不良でした。

 単行本では、前半が「塩の街」としての本編。後半が「塩の街。その後」としての短編集ですが、単行本1冊を丸々使って、塩害についても納得のいくストーリー展開にすれば、もっと読み応えがあったかな。

 

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