毎日が読書日和ー思ったままの感想文

40歳で気付いた読書の魅力。小説から映画まで、感想を綴ります。

「告白」 湊かなえ

 「告白」の内容

 「愛美は死にました。しかし事故ではありません。このクラスの生徒に殺されたのです」我が子を校内で亡くした中学校の女性教師によるホームルームでの告白から、この物語は始まる。語り手が「級友」「犯人」「犯人の家族」と次々と変わり、次第に事件の全体像が浮き彫りにされていく。衝撃的なラストを巡り物議を醸した、デビュー作にして、第6回本屋大賞受賞のベストセラーが遂に文庫化!【「BOOK」データベースより】

 

「告白」の感想 

 ひとつの事件を、5人の視点から描く小説です。この手法は、宮部みゆき氏の「模倣犯」を思い出させます。

 「模倣犯」と同じく、事件の概要と犯人は最初に語られます。なので、犯人捜しのミステリーではなく、復讐劇とそれに関わった人々の心象の物語です。被害者と加害者そして第3者といった人物の視点から語られる物語は、それぞれに絡まり合い、この事件の真相を明らかにしていきます。この真相というのは、この事件に関わった人々の心の闇の部分です。

 

  この小説は、6章で構成されています。

  第一章 聖職者(女性教師)

  第二章 殉教者(クラスメート)

  第三章 慈愛者(加害者の母)

  第四章 求道者(加害者)

  第五章 信奉者(加害者)

  第六章 伝道者(女性教師)

 タイトルの付け方は、センスがあるなと感じました。その章の内容を一言でうまく言い表しています。

 

 そこで、小説の内容なのですが、非現実的な部分が目立ちます。また、偶然と必然の区別がよく分かりませんでした。

 発端は、子供を学校内の事故で亡くした女性教師が、実は事故ではなく殺されたのだとホームルームで告白するところから始まります。そして、その犯人もクラスの中にいて、誰かということも分かっています。そこで、復讐をするわけですが、その復讐の仕方があまりにも非現実的で理解できません。内容を言ってしまうと、未読の方に申し訳ないので言いませんが、そんな復讐で、子供の無念を晴らすことができるとは思えません。

 

 第一章で女性教師が、あまりにも感情もなく、ただ事件の概要を話す姿は、違和感というか嫌悪感を感じてしまいました。物語の概要の解説みたいな語りが、ただ続くだけで、物語に引き込まれていきません。子供を殺された母親の感情が、全く伝わってこないのです。

 

 第二章から第五章までは、加害者、クラスメート、加害者家族といった視点から描かれます。 

 まず、加害者を殺人へと至らしめた動機が、陳腐すぎる気がします。人に認められたいという理由だけで、殺人へと突き進むでしょうか。そんな単純なことではありません。人が殺人を犯すには、もっと深く昏い感情を溜める必要が要りますが、単純すぎる思考回路で結論付けています。

 そして、加害者の家族やクラスメートは、自分勝手な思い込みだけで行動し、感情移入できない。そもそも加害者の家族については、事件の真相を知っていながら、子供の罪を認めない。いくら親バカでも、有り得ない設定です。殺人を犯した子供に、困惑していますが、罪を犯したと認識しません。そのメンタリティが理解できません。

 

 そして、一番理解しがたいのが、女性教師の復讐は計画通りだったのかどうかです。第一章で、復讐を実行し、加害者に通告します。それをもって、どのような復讐を成し遂げたかったのか?

 結果として、全く違う形で、物語は終わるのですが、その結末は女性教師の計画とは違ったはずです。それとも、この結末は、この女性教師が描いた必然の結果であったのか。それがよく分かりません。

 物語としては、偶然が重なり合って起こった結末のように見えながら、実は計画通りだったという終わり方が、ミステリーとしては一番いい終わり方だと思います。ただ、偶然の結果であったとしか読み取れませんでした。

 

 この小説の一番のテーマは復讐です。その復讐劇が、不十分な出来です。そして、事件を取り巻く5人の物語も、深い感情表現がされているとは思えません。

 登場人物たちの悪意を積み重ねていき、最後は誰も救われない。どこにも救いがなく正義もない。そんな小説です。

 読後の気持ち悪さは半端なかったです。著者が意図して、救いをなくしているのでしょう。それが、湊かなえ氏の小説の本質なのかもしれません。

 ただ、途中で読むのを挫折するほどつまらないわけでもないですけど。

 

告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)

告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)

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