毎日が読書日和ー思ったままの感想文

40歳で気付いた読書の魅力。小説から映画まで、感想を綴ります。

「異類婚姻譚」 本谷有希子

異類婚姻譚の内容

子供もなく職にも就かず、安楽な結婚生活を送る専業主婦の私は、ある日、自分の顔が夫の顔とそっくりになっていることに気付く。「俺は家では何も考えたくない男だ。」と宣言する夫は大量の揚げものづくりに熱中し、いつの間にか夫婦の輪郭が混じりあって…。「夫婦」という形式への違和を軽妙洒脱に描いた表題作ほか、自由奔放な想像力で日常を異化する、三島賞&大江賞作家の2年半ぶり最新刊! 【「BOOK」データベースより】 

 

異類婚姻譚の感想 

 主人公の「サンちゃん(妻)」が、夫とそっくりの顔になっていったところから始まります。夫婦間の関係性を書いた作品なのかなと思いつつ読み進めると、最後は、「オカルト?」って感じになってしまいました。読後は、ボンヤリとした気持ち悪さが残ってしまいました。

  夫婦の顔が似てきたまでは良かったのですが、夫の顔のパーツがズレるというくだりになったところで、この小説が現実的な物語ではないのだなと気付いてしまいました。

 そうなれば、「顔が似てきた」、「顔のパーツがズレる」など、そういったエピソードに、一体どういった意味を含ませて書いているのが問題になってきます。

 理解できる部分と、理解できない部分がありました。

 少し、ストーリーを言ってしまいますが、夫は、家では「1日3時間はテレビを見る」「家では何も考えない」と、結婚当初に「サンちゃん」に宣言します。そして、その通りに実行していきます。とにかくだらしがない。読んでいて苛立ちを覚えるほどです。

 そうするうちに、夫の顔のパーツが本来あるべき場所から、だらしなくズレていってしまうようになります。このズレは、だらしなく過ごす夫の生き方を表しているのでしょう。この部分は、おそらく理解できていると思っていますが。

 

 ここからは、よく理解できない部分です。

 そして、ある日、サンちゃんは自分の顔のパーツまでズレていることに気付いてしまいます。最初に、夫婦は似てくるという話が繋がってきます。

 サンちゃんの夫は、会社も行かなくなり、専業主夫のような生活を送り、毎日揚げ物をして、サンちゃんに食べさせるようになります。そして、サンちゃんは、夫の揚げ物に辟易としながらも、食べ始めると止まらない。だらしない夫に同化していっているということなのでしょう。

 

 そこで、話は前後しますが、この物語には、サンちゃん夫婦と、もう一組の夫婦「キタエさん」の夫婦が登場します。このキタエさんは、飼っている猫が、家のあちこちにおしっこをするので、捨てることを決意します。そして、捨て場所として、サンちゃんが「山」を提案します。そして、山に捨ててくるのです。

 

 ここで、サンちゃんの夫の話と繋がるのでしょうか。家で揚げ物をし続ける夫を、おしっこをし続ける猫とだぶらせているのでしょうか。そこは、ちょっと分かりません。

 詳細は書きませんが、最終的には、夫も、キタエさんの猫と同じ運命を辿るのですが、猫と夫には、同一性があるのでしょうか。

 猫のおしっこに純粋に困っているキタエさん。それと、夫の揚げ物に困っているようでありながら食べてしまうサンちゃん。ここに、同一性を感じることは出来なかった。

 猫と夫の話に関連性を感じることが出来ないなら、猫の話は不要になってしまいます。そうだとしても、このふたつの事柄にどういった意味を持たせているのか、私には読み取れませんでした。

 しかも夫の成れの果ての意味するところも、よく理解できませんでした。

 比喩が暗示していること、そして現実の話。その絡まりあいが、混然として収拾がつかず、何だかモヤモヤしてしまいました。しかも、結末はオカルトですし、「何だったのかなあ」というのが、正直な感想です。

 単なる、だらしない夫を持った妻が、夫に取り込まれそうになっただけの話にしか感じませんでした。

  ただ、芥川賞の選考委員の選評を見てみると、高評価をしている委員の方が多いように感じます。そうなると、まだまだ私には読解力がないのかなと自省しないと駄目なのでしょうか。

 

 「異類婚姻譚」のほか、「犬たち」「トモ子のバウムクーヘン」「藁の夫」の3編が収録されていますが、どれもオカルト気味で、好みではなかったです。

 

 ちなみに、標題の「異類婚姻譚」とは 

民俗学用語。異類求婚譚ともいう。人間が動物や精霊などの異類と婚姻する昔話の一つ。異類が男性の場合と女性の場合がある。男性の場合は,名を隠して女のもとに通う婿の本体がへびだったというへび婿入り型が代表であり,その他,笑話的なさる婿説話も知られている。女性の場合は,危機を救われたつるが美女となりその妻になる「つる女房」や,「はまぐり女房」のように動物が恩返しをする形式のものが多い (→動物報恩譚) 。その他,「柳の精物語」「羽衣伝説」などもこの類型である。 【コトバンクより】 

 

異類婚姻譚

異類婚姻譚

rgba(123,215,249,100) rgba(252,252,84,0.8) rgba(102,255,204,1)