毎日が読書日和ー思ったままの感想文

40歳で気付いた読書の魅力。小説から映画まで、感想を綴ります。

「深夜特急1 香港・マカオ」 沢木耕太郎

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 旅に出たくなる。その一言に尽きます。

 この小説で描かれているのは「旅行」ではなく、「旅」と言う言葉が相応しい。「旅」でなければ「放浪」と言う言葉でもいいかもしれない。行程表もなく、自分がこうしたいと思った通りに行動していく。

  ただ、その行動が正しいものかどうかは別ですが。

 そもそも、何が正しくて何が間違っているかなどと考えること自体が必要ない。そんなことを考えながら読むものではないでしょう。

 著者である沢木耕太郎氏のノンフィクションの紀行小説。紀行小説と言っても、ただ外国を紹介するものではありません。

 旅の中で生きるということ。彼の人生が描かれています。

 バック・パッカーのバイブルとも言われています。この小説を読んで、実際に旅に出た人たちも多くいるのでしょう。そう考えると、多くの人に多大な影響を与えた作品だと言えます。

 

 

深夜特急1 香港・マカオ」の内容 

インドのデリーからイギリスのロンドンまで、乗合いバスで行く―。ある日そう思い立った26歳の〈私〉は、仕事をすべて投げ出して旅に出た。途中立ち寄った香港では、街の熱気に酔い痴れて、思わぬ長居をしてしまう。マカオでは、「大小」というサイコロ博奕に魅せられ、あわや…。1年以上にわたるユーラシア放浪が、今始まった。いざ、遠路2万キロ彼方のロンドンへ。 【「BOOK」データベースより】 

 

第一章 発端

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  紀行小説でありながら、書き出しはインドのデリーでの滞在風景からです。それも、とても停滞し堕落した生活ぶりが描かれています。

 デリーの風景と、そこに暮らすデリーの人々。

 そして、同じような旅をしている外国人の旅人。

 デリーの街が目の前に浮かぶようです。

 冒頭としては、とても紀行小説とは思えない。デリーの街に囚われた旅人を描いているとしか感じません。

 しかし、その囚われた生活から脱出する決意が、日本を旅立つ時の決意でもある。

 デリーからロンドンまで、乗り合いバスで行く。 

  本来の旅の出発点から、物語をスタートさせることに意味があるのかもしれません。もちろん、デリーに行き着くまでにも、壮大な旅があります。小説自体は、日本を経ってからの旅が描かれますが、プロローグとしてはデリーから書き始めたかった。そういうことかもしれません。

 

第二章 香港 

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 描かれているのは、沢木が旅した1970年代の香港です。ですので、現在とは状況は異なっていると思います。

 私は、1970年代当時の香港がどのようなものだったのか、よく知りません。

 現在、私が抱いているイメージは、高層ビルが立ち並ぶ現代的な一面を持ちながら、雑多な街並みも残している。そのような二面性を持っている印象です。

 当時は、もっと雑多な部分が多かったのかもしれません。勝手な印象ですが、小説を読むと、そのように感じます。もちろん、彼が雑多な部分に魅力を感じ、その魅力を大きく描いているために、今より雑多なイメージを持ってしまうのかもしれません。

 

 彼が感じた、その魅力は、少し立ち寄るだけの予定だった香港に、何週間も滞在させてしまうほどです。

 それは、雑多で飾り気がなく、日常の生活が行われている香港です。

 汚い部屋にゴキブリがいるバスルーム。

 隣の部屋の音も聞こえる酷い部屋。

 隣のビルの部屋が丸見えで、そこに暮らす香港の人々の日常が見える窓。

 そこに、香港の魅力を感じることが出来るかどうかは、人それぞれだと思いますが。

 ただ、安食堂や露店街、そこに暮らす人々の熱気。食事を奢ってもらうなどの香港の人たちの親切。

 それは、普通の観光旅行では決して味わえないものだし、味わってみたいと思わせるものです。また、彼の目を通して描かれる香港は、旅行本や旅行番組などでは知ることが出来ないものだと感じます。

 

 綺麗な部分もあれば、そうでない部分もある。綺麗か汚いではなく、飾られているかそうでないか、ということかもしれません。そして、彼の描く香港は、飾られていない香港であり、そこに大きな魅力がある。

 バック・パッカーらしい旅です。

 

第三章 マカオ 

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 マカオは、旅というよりもカジノの話です。マカオの観光も多少ありますが、その大部分をカジノでの出来事を描いています。

 賭け事は、人の本質が垣間見えるものなのでしょう。他人の本質だけでなく、自分の本質も。そこに、沢木は魅力を感じたのだろうか。

 私は賭け事をしないので、ここまでのめり込む気持ちがあまり理解出来ないところもあります。

 

 カジノでのディーラーとの駆け引きは、読んでいて息詰まるものがあります。それは、勝ち負けの問題もありますが、カジノから抜け出せなくなる危機感のようなものを感じさせるからです。

 所持金全てを失っても構わないと思わせるほど、カジノには魔力があるのかもしれません。負けることなく、カジノを終えることが出来、次の地へと出発することが出来たのは、幸運(実力かもしれませんが)だったのかもしれません。

 

 香港・マカオと続いた旅は、とてもディープなものでした。これは、香港とマカオの素の部分に、彼が躊躇いなく飛び込んで行ったから体験できたのでしょう。なかなか、出来ることではありません。

 今と昔では世情が違います。今は、テロもありますし。ただ、当時も決して安全とは言えなかったと思います。その中で、ここまで深く香港・マカオに触れた彼の旅は、とても惹き込まれる。 

 

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