晴耕雨読で生きる

本を読み、感想や書評を綴るブログです。主に小説。

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『硝子の塔の殺人』:知念 実希人【感想】|謎を追うのは名探偵・碧月夜と医師・一条遊馬。

ご覧いただきありがとうございます。今回は、知念 実希人さんの「硝子の塔の殺人」の読書感想です。 本格ミステリーを意識した作品です。クローズドサークルで起こる連続殺人や様々な職業の招待客。巻頭に掲載されている建物の構造や平面図、登場人物一覧な…

『羊は安らかに草を食み』:宇佐美まこと【感想】|それでも消せない”秘密の絆”があった

ご覧いただきありがとうございます。今回は、宇佐美まことさんの「羊は安らかに草を食み」の読書感想です。 穏やかなタイトルから想像できないくらい重い内容でした。認知症、太平洋戦争敗戦後の満州の混乱、家族の在り方。人生を振り返る重厚な内容に加えて…

『麦本三歩の好きなもの 第二集』:住野 よる【感想】|あいかわらずだけど、ちょっと新しい日々

ご覧いただきありがとうございます。今回は、住野 よるさんの「麦本三歩の好きなもの 第二集」の読書感想です。 前作に引き続き、主人公「麦本三歩」の好きなものを描いた短編集です。12の短編があるので、各短編はかなり短い。なので気楽に読めます。 図書…

『invert 城塚翡翠倒叙集』:相沢 沙呼【感想】|すべてが、反転。

ご覧いただきありがとうございます。今回は、相沢 沙呼さんの「invert 城塚翡翠倒叙集」の読書感想です。 2020年本屋大賞第6位に選ばれた「medium 霊媒探偵城塚翡翠」の続編です。中編の倒叙ミステリー集で、3編の物語で構成されています。倒叙ミステリー…

『なぜ秀吉は』:門井 慶喜【感想】|世のすべてを狂乱させる正気の人

ご覧いただきありがとうございます。今回は、門井 慶喜さんの「なぜ秀吉は」の読書感想です。 豊臣秀吉を描いた時代小説は多い。描かれ方も様々です。好意的に描かれることもあれば、冷酷で残忍な側面が描かれることもあります。多様な捉え方ができる人生と…

『52ヘルツのクジラたち』:町田 そのこ【感想】|何も届かない、何も届けられない

ご覧いただきありがとうございます。今回は、町田 そのこさんの「52ヘルツのクジラたち」の読書感想です。 2021年本屋大賞受賞作。最初に気になるのがタイトルです。「52ヘルツのクジラ」とは何なのでしょうか。 物語の早い段階で、意味するところは語られま…

『ドクター・デスの遺産』:中山 七里【感想】|生きる権利と死ぬ権利が平等にある

ご覧いただきありがとうございます。今回は、中山 七里さんの「ドクター・デスの遺産」の読書感想です。 犬養隼人シリーズの第4作目です。刑事もののミステリーですが、本作では安楽死をテーマに生きる権利と死ぬ権利について深く踏み込んでいます。 姿の見…

『クスノキの番人』:東野 圭吾【感想】|その木に祈れば、願いが叶う

ご覧いただきありがとうございます。今回は、東野 圭吾さんの「クスノキの番人」の読書感想です。 クスノキに秘められた謎が重要な要素ですが、ミステリーでははなくヒューマンドラマの印象が強い。登場人物の心の機微が丁寧に描かれているからでしょう。読…

『オルタネート』:加藤シゲアキ【感想】|私は、私を育てていく。

ご覧いただきありがとうございます。今回は、加藤シゲアキさんの「オルタネート」の読書感想です。 2021年本屋大賞第8位。第164回直木賞候補にも選出されています。三人の高校生(一人は中退している)が主人公の群像劇です。 三人の物語は独立しているよう…

『犬がいた季節』:伊吹 有喜【感想】|18歳。その迷いも覚悟も希望も。

ご覧いただきありがとうございます。今回は、伊吹 有喜さんの「犬がいた季節」の読書感想です。 2021年本屋大賞第3位。6つの物語で構成される連作短編集です。 八稜高校に飼われることになった白い犬「コーシロー」の目を通して描かれる高校生たちが主人公…

『一人称単数』:村上 春樹【感想】|世界は流れていく 物語が光景をとどめる

ご覧いただきありがとうございます。今回は、村上 春樹氏の「一人称単数」の読書感想です。 八編の短編集です。表題作「一人称単数」のみ書き下ろしであり、他は文學界で発表された作品です。各短編に関連性はなく、完全に独立しています。なので、それぞれ…

『パズル・パレス』:ダン・ブラウン【感想】|史上最大の諜報機関にして、暗号学の最高峰

ご覧いただきありがとうございます。今回は、ダン・ブラウン氏の「パズル・パレス」の読書感想です。 ダン・ブラウンのデビュー作品です。その後の「天使と悪魔」、「ダ・ヴィンチ・コード」で一気に世界中で人気の小説家になります。 本作はフィクションの…

『悪と仮面のルール』:中村 文則【感想】|悪とは何か

ご覧いただきありがとうございます。今回は、中村 文則さんの「悪と仮面のルール」の読書感想です。 玉木宏主演で映画化されていますが、あくまで小説についての感想です。 タイトルを見ると、人間の負の側面を描き出している作品だと想像します。悪と言って…

『アクセル・ワールド 3~4(略奪者編)』:川原 礫【感想】

ご覧いただきありがとうございます。今回は、川原 礫さんの「アクセルワールド3~4」の読書感想です。 3巻と4巻を通じて描かれるのは、春雪たちと略奪者ダスク・テイカーの戦いです。両者は、現実世界と仮想世界の両方で戦います。その過程で加速世界の…

『アルルカンと道化師』:池井戸 潤【感想】|探偵半沢、絵画の謎に挑む。

ご覧いただきありがとうございます。今回は、池井戸 潤さんの「アルルカンと道化師」の読書感想です。 2020年9月17日に発刊された半沢直樹シリーズの五作目です。半沢が東京中央銀行大阪西支店に転勤した直後が舞台なので、第一作「オレたちバブル入行組」の…

『お探し物は図書室まで』:青山 美智子【感想】|本ですか?仕事ですか?人生ですか?

ご覧いただきありがとうございます。今回は、青山 美智子さんの「お探し物は図書室まで」の読書感想です。 2021年本屋大賞第2位。五つの短編で構成されていて、それぞれが独立した物語です。 物語の鍵となるのは区のコミュニティセンター内にある図書室と、…

『わたし、定時で帰ります。』:朱野 帰子【感想】|いつまで残業するつもり?

ご覧いただきありがとうございます。今回は、朱野 帰子さんの「わたし、定時で帰ります。」の読書感想です。 働き方改革は、どのくらい進んだのでしょうか。ワークライフバランスという言葉もよく聞きます。これらの言葉が無くならないのは、まだまだ達成さ…

『麦本三歩の好きなもの』:住野 よる【感想】|好きなものがたくさんあるから、毎日はきっと楽しい。

ご覧いただきありがとうございます。今回は、住野 よるさんの「麦本三歩の好きなもの」の読書感想です。 社会人になったばかりの麦本三歩の生活を描いた日常小説です。図書館勤務をする彼女の日常は普通の日々で、取り立ててドラマチックな出来事や大きなア…

『生きてさえいれば』:小坂 流加【感想】|きっといつか幸せが待っている

こんにちは。本日は、小坂 流加さんの「生きてさえいれば」の感想です。 「余命10年」は、著者自身の人生を投影した作品でした。だからこそ読者の心に響くものがあったのだろう。残念ながら文庫が発刊される前に他界されてしまいましたが。本作は著者が他界…

『となり町戦争』:三崎 亜記【感想】|見えない戦争

こんにちは。本日は、三崎 亜記さんの「となり町戦争」の感想です。 第17回小説すばる新人賞受賞作。著者のデビュー作でありながら、直木賞候補にもなっています。 タイトルどおり、となり町との戦争を描いています。現在の日本を舞台に自治体同士が戦争をす…

『この本を盗む者は』:深緑 野分【感想】|ああ、読まなければよかった!

こんにちは。本日は、深緑 野分さんの「この本を盗む者は」の感想です。 以前読んだ「ベルリンは晴れているか」とは全く作風が違います。ミステリーの要素を含むのは同じですが、「ベルリンは晴れているか」は史実を舞台にした現実的な物語です。一方、本作…

『オリンピックの身代金』:奥田 英朗【感想】|日本を強請れ!

こんにちは。本日は、奥田英朗氏の「オリンピックの身代金」の感想です 時は、昭和39年。10月10日から開催されるオリンピックに沸いている東京が舞台です。東京オリンピックが人質となった身代金要求事件。爆弾を使い、東京オリンピックの開催を妨害する犯人…

『ハケンアニメ!』:辻村 深月【感想】|”いい仕事”がしたい!

こんにちは。本日は、辻村 深月さんの「ハケンアニメ!」の感想です。 2015年本屋大賞第3位。アニメ制作を舞台にした職業小説です。読んだ印象は、有川浩さんの小説の雰囲気を感じます。どこがと言われると答えに困りますが。 制作されるアニメが減った訳で…

『R帝国』:中村 文則【感想】|朝、目が覚めると戦争が始まっていた。

こんにちは。本日は、中村 文則氏の「R帝国」の感想です。 表紙は「教団X」を彷彿とさせる白黒の印象的な絵柄です。内容は直接的に関係していません。あくまでも別の物語です。 架空の国「R帝国」が舞台です。他国も世界情勢もあくまで架空です。しかし、…

『心淋し川』:西條 奈加【感想】|誰の心にも淀みはある。

こんにちは。本日は、西條 奈加さんの「心淋し川」の感想です。 第164回直木賞受賞作。六つの短編から成る連作短編集です。 貧乏長屋が立ち並ぶ千駄木町の一角が舞台です。心町(うらまち)と呼ばれ、そこにある心淋し川(うらさびしがわ)は流れが滞り、淀んで…

『星の子』:今村 夏子【感想】|一緒に信じることが、できるだろうか。

こんにちは。本日は、今村 夏子さんの「星の子」の感想です。 第157回芥川賞候補であり、2018年本屋大賞第7位の小説です。主人公「ちひろ」の視点を通じて、家族の在り方・新興宗教・友人関係の中で、彼女自身の変化が描かれています。 小学生から中学三年…

『鹿の王』:上橋 菜穂子【感想】|命をつなげ

こんにちは。本日は、上橋 菜穂子氏の「鹿の王」の感想です。 2015年本屋大賞を受賞したファンタジー小説です。かなりの長編作品ですが、一気に読みきってしまうほど引き込まれます。架空の世界を舞台にしたファンタジーですが、国家と個人・支配と従属とい…

『罪の声』:塩田武士【感想】|逃げ続けることが、人生だった。

こんにちは。本日は、塩田武士氏の「罪の声」の感想です。 1985年から86年にかけて発生した「グリコ・森永事件」をベースに執筆された小説です。当時、私はまだ子供でしたが、今でもきつね目の男の顔を思い浮かべることができます。 未解決事件なので犯人は…

『さざなみのよる』:木皿 泉【感想】|宿り、去って、やがてまたやって来る

こんにちは。本日は、木皿 泉氏の「さざなみのよる」の感想です。 木皿泉氏の小説を読むのは初めてです。夫婦脚本家のペンネームだと知り、二人で小説を執筆していくのはどんな作業なのか興味の抱くところです。 本作は死を扱っています。生きている限り、死…

『コンタクト』:カール・セーガン【感想】|どこかの惑星に必ず知的な生物がいる

こんにちは。本日は、カール・セーガン氏の「コンタクト」の感想です。 1986年に日本語訳の文庫が発刊されました。地球外知的生命体とのファーストコンタクトを描いており、天文学者でもあるカール・セーガンの中でも知られた作品です。 地球外知的生命体探…