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『また、同じ夢を見ていた』:住野よる【感想】|心が満たされて温かい気持ちが溢れだす

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 読後に感じるのは、「心が何かに満たされて温かい気持ちになる」ということです。主人公の小学生・小柳奈ノ花が、授業の宿題である「幸せと何か」を考える物語です。

「また、同じ夢を見ていた」の内容  

きっと誰にでも「やり直したい」ことがある。学校に友達がいない“私”が出会ったのは手首に傷がある“南さん”とても格好いい“アバズレさん”一人暮らしの“おばあちゃん”そして、尻尾の短い“彼女”だった― 【引用:「BOOK」データベース】 

「また、同じ夢を見ていた」の感想 

ノ花 

 奈ノ花は学校に友達がいません。何故なら、学校の同級生は自分より馬鹿だと思っているからです。彼女は友達がいなくても平気です。なぜなら、奈ノ花には学校の外に友達がいるからです。 

  • 猫の「彼女」
  • 知的で綺麗な女性の「アバズレさん」
  • お菓子作りの上手な優しい「おばあちゃん」
  • ある日出会った、女子高生の南さん 

 奈ノ花は、放課後にアバズレさん達を訪れるのが日課であり、楽しみでもあるのです。そして、奈ノ花はいつも猫の「彼女」と一緒にアバズレさん達を訪れます。学校の宿題の「幸せとは何か」という問いを、その3人と考えるのです。 

ノ花の口癖「人生は・・・」 

 奈ノ花の口癖は「人生とは・・・」です。例えば冒頭に、

人生は、プリンみたいなものってことね

と言います。意味は「甘いところだけで美味しいのに、苦いところをありがたがる人もいる。」

人生って虫歯と一緒よ

とも言います。意味は「嫌なら早めにやっつけなきゃ・・・」 

 他にも、奈ノ花は多くの機知に富んだ人生の例えをします。その口癖は、アバズレさんとの関係において物語を大きく動かします。 

バズレさん・おばあちゃん・南さん 

 アバズレさん・おばあちゃん・南さんとの関係が、物語の軸です。ただ、現実的な話かと思って読んでいるとファンタジー的な要素も含まれてきます。その要素が、3人が何者なのかということです。物語の核であり、最も重要な事柄です。それを知った時に、今まで読んできた内容が腑に落ちます。アバズレさん・おばあちゃん・南さんが何者か分かった時、彼女たちは奈ノ花に「人生とは・・・」を語り聞かせます。 

  • アバズレさんは「人生とはプリンと一緒だ」と言います。ただ、意味は奈ノ花と違います。人生には苦いところがあるかもしれない。でも、その器には甘い幸せな時間がいっぱい詰まっている。・・・ 
  • 南さんは「人生とは自分で書いた物語だ」と言います。その意味は、推敲と添削、自分次第でハッピーエンドに書きかえられる。・・・ 
  • おばあちゃんもありますが、それは是非読んでください。 

 彼女たちの言葉は、奈ノ花の言葉とは全く違います。なぜなら、奈ノ花の言葉は単なる人生の例えに過ぎないからです。しかし、彼女たちの言葉は人生の例えではなく、人生そのものだからです。そして、彼女たちの言葉だからこそ奈ノ花の心に強く響くのです。 

さいごに 

 最初に、この小説は心が何かに満たされて温かい気持ちになる、と書きました。ストーリーがよく出来ているからとか、文章表現が巧いからとかではありません。決して、ストーリーの出来とか文章表現が必要ないと言っている訳ではありません。もちろん、それも素晴らしいです。

 何故、そのように感じるのかを言葉にすることはとても難しいです。しかし、それ以上に心に直接響く何かがあるのです。この本を読んだ人に、必ず心に届くものだと信じます。